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熊本県 慈恵病院に設置された「こうのとりのゆりかご」
こうのとりのゆりかご

 医療法人聖粒会慈恵病院は、ハンセン病患者を救うためにローマから派遣されたコール神父と5人のシスターにより、1989年に熊本市に設立されました。産婦人科、内科、小児科、麻酔科があり、年間分娩数は1714件(2016年)です。2005~2006年、熊本県内で新生児遺棄事件が3件起こり、2人の赤ちゃんが亡くなる事件をきっかけに、蓮田院長がドイツのベビークラッペをモデルにして、2007年「こうのとりのゆりかご」を設置しました。これまでに約130人の赤ちゃんが預け入れられた日本で唯一のベビーボックスです。設置にあたっては、法令違反にならないか問われましたが、医師や看護師が常勤する病院に設置するということで、当時の熊本市長が許可しました。
 一度「こうのとりのゆりかご」に預けると、赤ちゃんは児童相談所の管轄の元、乳児院など施設で育てられる可能性があるので、病院側では匿名で預けずに、インターホンで相談し、特別養子縁組にしてほしい、としています。そのため、扉を開けると手紙が置いてあり、連絡・相談を促す旨が書いてあります。預け入れした親を見つけることができれば、病院内で事情を聴き、今後について相談します。
 「こうのとりのゆりかご」設置と同時に、同院では「SOS赤ちゃんとお母さんの相談窓口」を開設、24時間365日体制で無料の電話相談、メール相談に応じています。預け入れ数は減っている一方で、相談件数は増えています。また「内密出産」の導入を検討中です。

FACT
日本の状況

■1年間に約97万人の赤ちゃんが生まれ、年間約18万件の中絶が行われています。棄児は27~66件/年(2001~2007年)、検挙事件に関わる出産直後の殺人・殺人未遂・遺棄は7~13件/年(2007~2013年)で、実際にはもっと多くの赤ちゃんが殺されたり、遺棄されているのではないかと思われます。
■「こうのとりのゆりかご」への預け入れは減少傾向にあります。これは「こうのとりのゆりかご」に対する認知度の低下や、熊本県が日本の南西部に位置しており、多くの都道府県に在住する方にとっては遠方である、ということなどが考えられます。
■その他、「赤ちゃんの愛着形成のために早い時期に里親に託したいが、ほとんどの赤ちゃんが乳児院で育てられる」「預け入れされた赤ちゃんの情報公開がほとんどされていないため、このシステムの是非を議論できない」「年間約1500万円の運営費用を病院が負担している」ことなどが課題です。
■一般社会は、「こうのとりのゆりかご」開設当初より応援する声が多くなりましたが、他国に比べて無関心の傾向にあります。マスコミは「赤ちゃんの命を救うシステム」と評価する一方、「出自を知る権利を損なう」「危険な自宅出産のきっかけになる」「赤ちゃんの遺棄・殺人の防止として機能していない」との批判的な意見もあります。政府は、熊本市の再三の要請にも関わらず、関与していません。

シンポジウム

※当動画は、第14回アジアヘルスプロモーション会議のPVから一部抜粋したものです。

発表者名 :蓮田 健
イベント名 :第14回アジアヘルスプロモーション会議
公演日 :2018年4月15日